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早川 卓志
関心と研究テーマ
生物の感覚がどのように進化してきたかについて関心を持っています。感覚進化と言っても適応的な進化 (新しい感覚を生み出す)、保存的な進化 (重要な感覚は失われない)、退化的な進化 (使わない感覚が失われる) など、多様な形があります。これら様々な感覚進化の動態をゲノムレベルで切り分けて、統合的な理解を得ることを目標としています。
現在は味覚受容体遺伝子ファミリーの種間・種内多様性を比較解析することで、多様な食性と環境変動に晒されてきた霊長類の味覚がどのように進化してきたかを解明することをテーマに研究しています。とりわけチンパンジーの苦味感覚に遺伝的な地域差がある (Hayakawa et al. 2012) ことに注目し、実際にチンパンジーが生息するアフリカに出かけ、野生チンパンジーが採食する植物と苦味受容体遺伝子との関係を調べています。
また、霊長類・齧歯類など28種類の哺乳類のゲノムを網羅的に比較することで、我々ヒトを含む真猿類において苦味受容体遺伝子のレパートリーが発達したことも明らかにしました(Hayakawa et al. 2014)。このことは、嗅覚退化とのトレードオフや、植物食性の発達などと、関連があると考えています。真猿類で発達した苦味受容体レパートリーは、チンパンジーの地域差進化においても特殊な傾向を示していたため、真猿類の採食生態において重要な役割を果たしていると考えられます。
略歴
2006年3月 |
東海高等学校 卒業 |
2006年4月 |
京都大学 理学部 理学科 入学 |
2010年3月 |
京都大学 理学部 理学科 (生物科学系) 卒業 |
2010年4月 |
京都大学大学院 理学研究科 生物科学専攻 霊長類学・野生動物系 修士課程 入学 |
2012年4月 |
京都大学大学院 理学研究科 生物科学専攻 霊長類学・野生動物系 博士後期課程 進学 |
2012年4月 |
日本学術振興会 特別研究員 (DC1) |
2015年3月 |
京都大学大学院 理学研究科 生物科学専攻 霊長類学・野生動物系 博士後期課程 修了 |
執筆 (英語)
- Takushi Kishida, JGM Thewissen, Takashi Hayakawa, Hiroo Imai, Kiyokazu Agata. Aquatic adaptation and the evolution of smell and taste in whales. Zoological Letters 1: 9 (2015). [Zoological Letters]
- Takashi Hayakawa, Nami Suzuki-Hashido, Atsushi Matsui, Yasuhiro Go. Frequent expansions of the bitter taste receptor gene repertoire during evolution of mammals in the Euarchontoglires clade. Molecular Biology and Evolution 31: 2018-2031 (2014). [PUBMED]
- Yasuka Toda, Tomoya Nakagita, Takashi Hayakawa, Shinji Okada, Masataka Narukawa, Hiroo Imai, Yoshiro Ishimaru, Takumi Misaka. Two distinct determinants of ligand specificity in T1R1/T1R3 (the umami taste receptor). The Journal of Biological Chemistry 288: 36863-36877 (2013). [PUBMED]
- Takashi Hayakawa, Tohru Sugawara, Yasuhiro Go, Toshifumi Udono, Hirohisa Hirai, Hiroo Imai. Eco-Geographical Diversification of Bitter Taste Receptor Genes (TAS2Rs) among Subspecies of Chimpanzees (Pan troglodytes). PLOS ONE 7: e43277 (2012). [PUBMED]
- Takashi Hayakawa, Mai Nakashima, Michio Nakamura. Immigration of a Large Number of Adolescent Female Chimpanzees into the Mahale M Group. Pan Africa News 18: 8-10 (2011). [KURENAI]
執筆 (日本語)
- 早川卓志, 今井啓雄. チンパンジーにおける苦味感覚の地域差と進化. 生物の科学 遺伝 67: 418-424 (2013). [NTS]
- 早川卓志. ヒトとチンパンジーの“食文化”を遺伝学から探る. Anthropological Letters 2: 22-23 (2013). [jinrui wakate]
- 早川卓志. ゲノムから探る野生チンパンジーの世界. 日本のサル学のあした―霊長類研究という「人間学」の可能性 (中川尚史, 友永雅己, 山極寿一 編): 22-23 (2012). [京都通信社]
- 田島知之, 谷口晴香, 山梨裕美, 大谷洋介, 小川詩乃, 早川卓志, 本郷峻. 第23回国際霊長類学会大会におけるStudent Affairs Workshopを終えて. 霊長類研究 27: 57-62 (2011). [J-STAGE]
発表 (英語)
- Takashi Hayakawa, Nami Hashido-Suzuki, Yamato Tsuji, Yasuhiro Go, Hirohisa Hirai, Laurentia Henrieta Permita, Sarah Nila, Kanthi Arum Widayati, Bambang Suryobroto, Hiroo Imai. Next-Generation Sequencing Analysis of Indonesian Colobine Genome. The 4th International Congress on Asian Primates (Oral, G5/O), Bogor, Indonesia, August 18th-21st (2014).
- Takashi Hayakawa, Nami Suzuki-Hashido, Atsushi Matsui, Tohru Sugawara, Toshifumi Udono, Hirohisa Hirai, Yasuhiro Go, Hiroo Imai. Evolution of the Bitter Taste Receptor Gene Reprtoire in Primates. The 4th International Congress on Asian Primates (Poster, G7/P), Bogor, Indonesia, August 18th-21st (2014).
- Takashi Hayakawa, Nami Suzuki-Hashido, Atsushi Matsui, Tohru Sugawara, Toshifumi Udono, Hirohisa Hirai, Yasuhiro Go, Hiroo Imai. Evolution of the Bitter Taste Receptor Gene Reprtoire in Primates. The XXVth Congress of the International Primatological Society (Poster, # 838), Hanoi, Vietnam, August 11th-16th (2014).
- Takashi HAYAKAWA. Molecular Ecology and Population Genomics in Wild Chimpanzees. PWS (Leading Graduate Program in Primatology and Wildlife Science) Kick-off Symposium (Poster, P-30), Kizugawa, Japan (2014).
- Takashi HAYAKAWA. Eco-Geographical Diversification of Bitter Taste Receptor Genes among Subspecies of Chimpanzees. The 2nd International Workshop on Tropical Biodiversity Conservation (Poster, Poster 4), Bangalore, India (2013).
- Takashi HAYAKAWA. Eco-Geographical Diversification of Bitter Taste Receptor Genes among Subspecies of Chimpanzees. The 2nd International Seminar on Biodiversity and Evolution (Oral, Oral 6), Kyoto, Japan (2013).
- Takashi HAYAKAWA, Tohru SUGAWARA, Yasuhiro GO, Toshifumi UDONO, Hirohisa HIRAI and Hiroo IMAI. Geography and evolution of bitter taste receptor genes in chimpanzees. The 10th International Symposium on Molecular and Neural Mechanisms of Taste and Olfactory Perception (Poster, ISP7), Fukuoka, Japan (2012).
- Takashi HAYAKAWA, Tohru SUGAWARA, Yasuhiro GO, Toshifumi UDONO, Hirohisa HIRAI and Hiroo IMAI. Eco-Geographical Differences of the Sense of Bitter Taste in Chimpanzees. The 1st International Seminar on Biodiversity and Evolution (Poster, Poster 05), Kyoto, Japan (2012).
- Takashi HAYAKAWA, Tohru SUGAWARA, Yasuhiro GO, Toshifumi UDONO, Hirohisa HIRAI and Hiroo IMAI. Molecular Evolution of the Bitter Taste Receptor Gene Family in Three Chimpanzee Subspecies. Young Researchers Conference on Evolutionary Genomics (Poster), Tokyo, Japan (2011).
- Takashi HAYAKAWA, Tohru SUGAWARA, Yasuhiro GO, Toshifumi UDONO, Hirohisa HIRAI and Hiroo IMAI. Molecular Evolution of the Bitter Taste Receptor Gene Family in Three Chimpanzee Subspecies. The 5th International Symposium of the Biodiversity and Evolution Global COE project (Poster), Kyoto, Japan (2011).
- Takashi HAYAKAWA, Tohru SUGAWARA, Yasuhiro GO, Toshifumi UDONO, Hirohisa HIRAI and Hiroo IMAI. Intrasubspecific Polymorphisms and Intersubspecific Divergence of Bitter Taste Receptor Genes in Chimpanzees. International Primatological Society XXIII Congress (Poster), Kyoto, Japan (2010).
- Takashi HAYAKAWA, Tohru SUGAWARA, Yasuhiro GO, Toshifumi UDONO, Hirohisa HIRAI and Hiroo IMAI. Comparative Analysis of Bitter Taste Receptor Genes between Chimpanzee Subspecies. The 4th International Symposium of the Biodiversity and Evolution Global COE project (Poster), Kyoto, Japan (2010).
発表 (日本語)
- 早川卓志, 井上英治, 松尾ほだか, Kathelijne Koops, 村山美穂, 橋本千絵, 松沢哲郎, 今井啓雄. 野生チンパンジーにおける苦味受容体の遺伝的多様性と進化. 第59回プリマーテス研究会 (口頭), 犬山, 愛知, 1月31日-2月1日 (2015). *優秀口頭発表賞.
- 早川卓志. 屋久島の動物のウンチの世界. 屋久島学ソサエティ第2回大会 (ポスター), 屋久島, 12月13-14日 (2014).
- 早川卓志, 松沢哲郎. 野生チンパンジーにおける乳幼児運搬様式の決定要因. 第17回SAGAシンポジウム (ポスター), 日立, 11月15-16日 (2014).
- 早川卓志. チンパンジーの遺伝子・ゲノムの地域差と行動多様性の関係. 日本アフリカ学会中部支部2014年度第1回例会 (口頭), 名古屋, 10月18日 (2014).
- 早川卓志, 岸田拓士, 郷康広, 川口恵里, 会津智幸, 石崎比奈子, 豊田敦, 藤山秋佐夫, 松沢哲郎, 阿形清和. 非侵襲糞サンプリングに基づくギニア・ボッソウの野生チンパンジーの全遺伝子配列解析. 第30回日本霊長類学会大会 (口頭), 東京 (2014). *優秀口頭発表賞.
- 早川卓志. 野生チンパンジーのゲノム生態学. 人類学若手の会 第2回総合研究集会 (ポスター), 八王子 (2014).
- 早川卓志. 次世代シークエンサーを用いた野生類人猿の遺伝的多様性の解析. 第1回集団遺伝学・分子進化学に関する研究会 (口頭), 相模原 (2014).
- 早川卓志, 岸田拓士, 川口恵里, 松沢哲郎, 阿形清和. 野生チンパンジーゲノムにおける全エクソン配列決定と遺伝的多様性の解析. 第16回SAGAシンポジウム (ポスター, #17), 高知 (2013).
- 早川卓志, 井上英治, Kathelijne Koops, 大東肇, 松沢哲郎, 今井啓雄. 野生チンパンジーにおける苦味受容体遺伝子の地域差と生態適応. 第29回日本霊長類学会・日本哺乳類学会2013年度 合同大会 (口頭, C2-3), 岡山 (2013). *優秀口頭発表賞.
- 早川卓志. アフリカから次世代シークエンサーへ:野生霊長類の「個人」ゲノム. NGS現場の会 第三回研究会 (ポスター, 2-75-B), 神戸 (2013).
- 早川卓志, 井上英治, Kathelijne Koops, 大東肇, 松沢哲郎, 今井啓雄. チンパンジー野生集団における苦味受容体遺伝子の多様性と進化. 日本進化学会第15回つくば大会 (口頭, 3B-09), つくば (2013).
- 早川卓志. オランウータンとアフリカ大型類人猿におけるゲノム多様性と進化の比較~味覚受容体遺伝子の研究から~. 進化人類学分科会 第30回シンポジウム 根幹大型類人猿の姿を探る ~オランウータンとアフリカ大型類人猿の比較を通して~ (口頭), 京都 (2013).
- 早川卓志. 西アフリカと東アフリカのチンパンジー. 人類学若手の会 第1回総合研究集会 (口頭), 千葉 (2012).
- 早川卓志. オランウータンにも苦味感覚の地域差があるか?. 第15回SAGAシンポジウム (ポスター, #05), 札幌 (2012).
- 早川卓志, 菅原亨, 郷康広, 鵜殿俊史, 平井啓久, 今井啓雄. チンパンジーの苦味感覚の地域差. 日本味と匂学会 第46回大会 (ポスター, P-006), 大阪 (2012).
- 早川卓志. チンパンジー苦味受容体の遺伝的多様性と生態地理. 統計数理研究所共同利用研究集会 生物集団に関する遺伝データと集団遺伝学 (口頭), 東京 (2012).
- 早川卓志, 鈴木南美, 松井淳, 今井啓雄, 平井啓久, 郷康広. 真主齧類における苦味受容体の進化. 日本進化学会第14回東京大会 (ポスター, P-32), 東京 (2012). *ポスター賞優秀賞.
- 早川卓志, 鈴木南美, 松井淳, 今井啓雄, 平井啓久, 郷康広. 霊長類味覚受容体レパートリーの進化史. 第28回日本霊長類学会大会 (口頭, A-09), 名古屋 (2012). *優秀口頭発表賞.
- 早川卓志. 野生霊長類のゲノム多型解析. NGS現場の会 第二回研究会 (ポスター, R44), 大阪 (2012).
- 早川卓志, 菅原亨, 郷康広, 鵜殿俊史, 平井啓久, 今井啓雄. チンパンジーの味覚に地域差はあるか? ~分子遺伝学からの考察~. 第14回SAGAシンポジウム (ポスター), 熊本 (2011).
- 早川卓志, 菅原亨, 郷康広, 鵜殿俊史, 平井啓久, 今井啓雄. チンパンジー3亜種における苦味受容体遺伝子ファミリーの分子進化. 日本進化学会 第13回大会 (ポスター), 京都 (2011).
- 早川卓志, 菅原亨, 郷康広, 鵜殿俊史, 平井啓久, 今井啓雄. チンパンジー3亜種における苦味受容体遺伝子ファミリーの分子進化. 日本霊長類学会 第27回学術大会 (口頭), 愛知 (2011).
- 早川卓志, 菅原亨, 郷康広, 鵜殿俊史, 平井啓久, 今井啓雄. チンパンジー亜種間における苦味受容体遺伝子配列の比較解析. 日本進化学会 第12回 年次大会 (ポスター), 東京 (2010).
- 早川卓志, 菅原亨, 郷康広, 鵜殿俊史, 平井啓久, 今井啓雄. チンパンジー苦味受容体遺伝子T2Rの種内多型及び亜種間差異の解析. 第12回SAGAシンポジウム (ポスター), 北九州 (2009).
賞罰
- 『第5回 日本学術振興会 育志賞』 (2015). 「霊長類の苦味受容体遺伝子レパートリーの分子進化と生態適応機構の解明」の研究に対して. 日本霊長類学会推薦. [JSPS]
- 『第59回プリマーテス研究会 優秀口頭発表賞』 (2015). 「野生チンパンジーにおける苦味受容体の遺伝的多様性と進化」の発表に対して. [JMC]
- 『第30回日本霊長類学会大会 優秀口頭発表賞』 (2014). 「非侵襲糞サンプリングに基づくギニア・ボッソウの野生チンパンジーの全遺伝子配列解析」の発表に対して. [KUPRI]
- 『第29回日本霊長類学会・日本哺乳類学会2013年度合同大会 優秀口頭発表賞』 (2013). 「野生チンパンジーにおける苦味受容体遺伝子の地域差と生態適応」の発表に対して. [KUPRI]
- 『日本進化学会第14回東京大会 ポスター賞優秀賞』 (2012). 「真主齧類における苦味受容体の進化」の発表に対して. [SESJ]
- 『第28回日本霊長類学会大会 優秀口頭発表賞』 (2012). 「霊長類味覚受容体レパートリーの進化史」の発表に対して. [KUPRI]
報道
- 「苦みを感じる仕組みが多様なわけ」日経サイエンス 2013年1月号. [日経サイエンス]
- 「チンパンジーの味覚には地域特異的な遺伝子が関係している」2012年8月17日, 朝日新聞, 京都新聞, 産経新聞, 中日新聞, 日本経済新聞, 毎日新聞, 京都放送, 朝日放送, 毎日放送等にて報道. [京都大学]
- 「チンパンジー、生息地で味覚異なる 京大霊長研が解明」2011年12月28日, 読売新聞. [KUPRI]