霊長類の木登り運動の解析

ニホンザルとクモザルの木登り運動について、運動学、運動力学、筋電図、逆動力学といった方法を用いて分析しました。

何故木登りなのでしょう?
 答1.直立二足歩行の進化に大きな影響を与えたと考えられる
 ロコモーションだからです。
 答2.霊長類の重要なロコモーションレパートリーなのに、
 分析されていなかったからです。

直立二足歩行を始める前に、我々の祖先はどのようなロコモーション(歩き方)をしていたのでしょうか。残念ながら、その答えはまだわかりません。しかし、木登り運動が何らかの影響を与えたであろうということには、多くの研究者が同意しています。霊長類が木登り時に使う脚の筋は、ヒトが直立二足歩行を行うためによく使う筋なのです。また、霊長類が木登り時に使う肩や腕の筋は、ヒトにおいて大きくなっている筋と同じなのです。

しかし、木登りはほぼ全てのサルが行う運動です。木登りが二足歩行の進化を促したのなら、何故、ヒト以外のサルたちは直立二足歩行を始めなかったのでしょうか?その疑問の解明に一歩近づくために、ニホンザルとクモザルの木登り運動を多角的に調べました。

その結果、それら2種の木登りはバイオメカニカルに大きく異なること、ニホンザル的ナ木登りをいくら行っても二足歩行の進化には役立たないこと、クモザルの木登りは二足歩行の進化を部分的に促すこと等が明らかになりました。我々の祖先は、二足歩行を始める前に、クモザルが行っているような木登りをしていたのかもしれません。
クモザルは、地上では二足歩行を上手に行います。でも、それは我々のような直立二足歩行ではありません。やはり、我々の祖先がどのように直立二足歩行を始めたのか、という問いは、まだ依然として未解決のまま残っています。答えに少し近づきはしたのですが・・・・

なお、バイオメカニクス分析から、ニホンザルの木登りは四足歩行によく似ていること、一方、クモザルは木登りと二足歩行で運動パターンを変えていることも明らかになりました。それぞれの動物の運動戦略を知る上で重要な情報が得られました。

【 関連文献 】

クモザル(上)とニホンザル(下)の木登り



木登り運動の逆動力学分析